錠剤検査は、安定した品質の医薬品を供給するために欠かせないものです。錠剤検査とはどういったことを行う検査なのでしょうか?
ここでは、錠剤検査の内容と、それを行うための錠剤検査装置の機能について解説します。
目次
医薬品の安全を維持するために必要な錠剤検査
医薬品は、その製造工程においても安全性が維持されていなければなりません。そのためにさまざまな検査が実施されますが、そのうちの重要な1つが錠剤検査です。
錠剤検査とはどのような検査なのか、その概要と検査方法を見てみましょう。
錠剤検査とは
医薬品は、間違った処方や服用の仕方が絶対に起きないようにしなくてはいけません。そのためにあるのが、識別表示です。
医薬品の識別表示は、調剤ミスや誤投与を防ぐうえで非常に重要な意味を持ち、確実に読み取れるような状態にする必要があります。この識別表示の確認を行う工程が錠剤検査の重要な役割の一つです。
経口製剤は口から摂取するため、異物や汚れの付着があるとそのまま体内に入る可能性があります。こういった異物や汚れも取り除かなければなりません。また、割れや欠けによる薬効減少の可能性のある錠剤を除外するためにも検査を行う必要があります。
このように、錠剤検査は重要な役割を持っています。それらをまとめると次の3つとなります。
- 識別表示の確認
- 汚れ・異物の除去
- 割れや欠けのある錠剤の除外
安全な医薬品の提供のため、これらの欠陥を確実に取り除く目的で錠剤検査が行われます。
錠剤検査の方法
このような重要な役割を持つ錠剤検査は確実性が求められると同時に、スピードも必要とされます。大量に製造される医薬品を短時間で確実に検査し、必要としている人の元へ提供しなければなりません。
しかし、錠剤を1錠ごとに人の目で確認するのは非現実的です。そこで用いられているのが錠剤検査専用の装置となります。
自動で錠剤検査を行う錠剤検査装置が、それぞれの医薬品製造所に導入され大量に生産される錠剤を高精度で検査しています。
錠剤検査装置の特徴と機能
錠剤検査装置は人の目による検査と比べられないほどのスピードで大量の錠剤を検査することが可能です。どのような方法でそれを実現しているのでしょうか。
錠剤検査装置の検査プロセス
錠剤検査装置は、高精度カメラによりさまざまな角度から外観検査をします。一般的な方法としては、高精度カラーカメラによって錠剤の裏表と側面を撮影し画像処理にかけます。その処理によって基準となる良品の錠剤を撮影した画像データと比較し、良否判定を行います。
この検査工程は自動で行われ、機種によって処理速度は異なるものの、一般的な丸い錠剤であれば1時間に100,000錠~700,000錠の検査が可能です。
錠剤検査装置の検査項目
錠剤検査装置は次のような項目について検査し、異常を検出することができます。
- 異物・黒色汚れの検出
微小な汚れの濃度変化や大きさを検出できます。 - 色汚れの検出
微小な汚れと色変化を検出できます。 - 形状不良の検出
錠剤の形状に関して、直径、面積、幅を基準値と比較し差を検出します。 - 異色錠の検出
錠剤の色と基準値とを比較し、色調度の差を検出します。 - 印刷汚れの検出
印刷汚れがないかマッチング比較での検出を行います。 - 刻印検査
刻印が正常かマッチング比較での検出を行います。
錠剤検査装置はこのような検査項目それぞれについて、設定した合格基準に沿って検査し、一定基準に満たないものは自動的に除外します。これまでの人の目による検査では多くの時間とコストがかかっていましたが、自動検査装置の登場によって検査が高速化しただけでなく、品質の安定性も向上しています。
これからの錠剤検査装置に求められる条件
医薬品製造の分野ではさらに高い生産性が求められると同時に、当然ながら品質の向上も欠かすことはできません。
こういった条件を満たす錠剤検査装置に求められる進化とは、どのようなものなのでしょうか。
これまでの進化
錠剤検査装置はこれまで、より安定した動作と精度向上を追い求めさまざまな進化を遂げてきました。照明をLED化することで光源を安定させ、3Dカメラによる凹凸抽出を強化することで判定精度を向上させる、といった方向の進化です。
また、判定だけでなく安定した錠剤の搬送という面でも進化しています。搬送構造を見直すことで高速処理化を可能とし、時間あたりに製造・検査可能な錠剤の数を飛躍的に伸ばしてきました。
このように、錠剤検査装置は効率化と高精度化を中心に進化してきたと言えます。
これからの錠剤検査装置に求められること
これまでは、判定検査精度や搬送構造をさらに高性能化させることに主眼をおいて進化してきました。こういった効率化や高精度化はさらに進んでいくと考えられます。
しかしこれからは、こういった機械としての進化に加え、再び「人の作業」に立ち戻った部分の強化が必要とされるのではないでしょうか。
錠剤検査装置が大きく進化しても、人が関わる部分がゼロになるわけではありません。必ずそこには人が関わり、検査の確実性を維持しなければならないからです。
例えば、検査工程が自動化されたとしても、錠剤検査装置を操作し管理する人が必要となります。そういったオペレーターの負担を軽減し操作性を向上させることで、より高い水準での品質を維持しながら省力化・省人化を進めることができるようになるのではないでしょうか。
そのために、UIの操作性や視認性の向上、設定項目の追加などが進むと予想できます。具体的には、操作パネルの大型化、画像記録機能の追加または高性能化、検査感度設定サポートなどが考えられます。
これからの錠剤検査装置は、こういったオペレーターの操作性に着眼した機能の進化や、人と検査装置がお互いを補助し合うような機能の向上が求められるのではないでしょうか。
医薬品の安全と品質を守る錠剤検査装置
錠剤検査装置の特徴と機能を紹介しながら、これからの錠剤検査装置はどのように進化していくのかを考えました。
錠剤検査は医薬品の安全と品質を守るうえで欠かせない重要な検査です。その検査を人に代わって行う錠剤検査装置は、高い精度だけでなくスピードも求められます。これまでの判定検査精度や検査速度の向上といった進化に加え、これからはオペレーターの操作性といった部分も進化していくと考えられます。
当社では、錠剤検査装置以外にも、製剤・充填・包装などの豊富な機械設備を扱っています。企画から販売、一貫製造ラインのコーディネート、メンテナンスまで幅広く対応が可能ですので、お気軽にお問合せください。
※弊社取り扱い装置は「製品一覧」ページよりご覧ください。
https://robotics.kowa-opt.co.jp/dedicated-machine