「ALCOA」「ALCOA CCEA」とは?対応のポイントも合わせて解説!

「ALCOA」「ALCOA CCEA」とは?対応のポイントも合わせて解説!

「ALCOA」「ALCOA CCEA(ALCOA+(プラス))」とは、データの完全性を証明するための要件のことです。製薬業界においてデータインテグリティ対応が急がれている今、「ALCOA」の遵守も求められています。そこで今回は、「ALCOA・ALCOA+の意味」や「医薬品の製造現場におけるALCOAの対応方法」を分かりやすく解説します。

※データインテグリティの全体像について知りたい方は、「データインテグリティ(DI)とは?対応が必要な理由と対策を分かりやすく解説!」も合わせてお読みください。

データインテグリティにおける「ALCOA」とは?

(1)「ALCOA」とは?

そもそもデータインテグリティとは、データがライフサイクルを通じて整合性・一貫性を保っており、欠損がないことを意味します。「ALCOA」は、データインテグリティ(データの完全性)を証明するために満たすべき要件のことです。FDAが1994年に初めて概念を紹介して以来、現在でもデータインテグリティの基本要件となっています。ちなみに2018年に発出されたガイダンス(※)では、以下のように「ALCOA」が紹介されています。

(原文)「For the purposes of this guidance, data integrity refers to the completeness, consistency, and accuracy of data. Complete, consistent, and accurate data should be attributable, legible, contemporaneously recorded, original or a true copy, and accurate (ALCOA)」
(和訳)「ガイダンスの目的に沿って言えば、データインテグリティとは、データの完全性・一貫性・正確性のことを言います。完全で一貫性があり、正確なデータは帰属可能であり、判読しやすく、同時に記録され、オリジナルまたは真正コピーであり、正確であるべきです(ALCOA)」

「ALCOA」の表記は、それぞれ「Attributable(帰属性)」「Legible(判読性)」「Contemporaneous(同時性)」「Original(原本性)」「Accurate(正確性)」の頭文字を取ったもので、守るべき要件の内容を示しています。

※参考:Data Integrity and Compliance With Drug CGMP Questions and Answers Guidance for Industry|FDA(PDF)

(2)「ALCOA CCEA(ALCOA+)」とは?

「ALCOA+」とは、ALCOA原則に「Complete(完全性)」「Consistent(一貫性)」「Enduring(耐用性)」「Available when needed(可用性)」を加えた、データインテグリティの要件です。EMA(欧州医薬品庁)の発出したガイドラインで言及され、ALCOA原則よりもさらに包括的な内容となっています。ちなみにEMAが2010年に発表したガイダンス(※)では、「ACCOA+」について以下のような文章で紹介されています。

(原文)「These include that the data and records are:
• Accurate
• Legible
• Contemporaneous
• Original
• Attributable
• Complete
• Consistent
• Enduring
• Available when needed」
(和訳)「データと記録については、以下のような内容が含まれます。
・帰属性がある

・判読できる
・同時である
・原本である
・正確である
・完全である
・一貫性がある
・耐用性がある
・必要なときに利用できる」

データインテグリティを確保する際には、「ALCOA」「ALCOA+」のいずれの要件も満たすことが必要です。

※参考:Reflection paper on expectations for electronic source data and data transcribed to electronic data collection tools in clinical trials|EMA(PDF)

「ALCOA」「ALCOA+」の意味・対応ポイントとは?

「ALCOA」「ALCOA+」は、具体的にどのような意味を示しているのでしょうか。ここでは、「ALCOA」「ALCOA+」の意味や意図を紹介したうえで、医薬品製造の現場で各要件を満たすための対応ポイントも解説します。

(1)A(帰属性:Attributable)

帰属性とは、すべての記録について「誰が」「いつ」作成したのかが分かることを意味します。帰属性は、記録における責任の所在を明らかにするための要件です。帰属性を満たすには、記録の作成時だけでなく変更時にも作業者と日時の情報が求められます。そのため、記録の作成・変更フローを事前に規定しておくことが大切です。

<紙媒体における対応のポイント>
◆記録用紙の原本は、作成者・承認者・作成日が記録できる仕様にする
◆重要な記録については署名を行えるよう、作業者の署名を登録しておく
◆記録を修正する際には、署名・日付に加えて「修正の理由」も明記する

<電子媒体における対応のポイント>
◆権限を与えられた人のみがシステムに入力・記録できるようにする
◆電子署名は、なりすましのできない方式(生体認証・非生体認証)で行う
(PIC/Sガイダンスにおいて、電子署名はバイオメトリクスを用いて行うことが推奨されています)

(2)L(判読性:Legible)

判読性とは、すべての記録について読むことができ、理解できる状態であることを意味します。判読性は、必要なタイミングで記録をスムーズに読み出しするために不可欠な要件です。判読性を高めるためには、関係者にしか理解できないような文言は極力使用せず、できるだけ分かりやすい表記で記録を残すことが大切でしょう。

<紙媒体における対応のポイント>
◆判別の難しい記号やコードは使用せず、読みやすいように記入する
◆記録台帳を作って取り出し状況を管理するといったように、記録を読み出しやすいように保管する

<電子媒体における対応のポイント>
◆監査証跡の機能を備えた電子システムを使用する
◆即時読み出しができるよう、データには索引をつけておく

(3)C(同時性:Contemporaneous)

同時性とは、すべての記録が作業と同時に作成されていることを意味します。同時性は、記録があとから改ざんされることを防ぐための要件です。同時性を満たすためには、記録が作成・変更されたときに日時が明記されている必要があります。紙媒体・電子媒体どちらの場合でも、使用する時計を正しく設定しておくことも重要です。

<紙媒体における対応のポイント>
◆活動が行われる場所で、作業と同時に記録する
◆一部例外を除いて、作業者本人が記録する
◆記録の際には、適切に管理された時計を使用する

<電子媒体における対応のポイント>
◆システム・アプリケーションの時刻を正しく設定する
◆同時性を確保できるようシステムのバリデーションを行う

(4)O(原本性:Original)

原本性とは、保存媒体に関係なく、「最初に作成された記録」が明確であることを意味します。原本性は、故意や過失でオリジナル記録が書き換えられないよう防ぐための要件だと言えるでしょう。原本性を満たすには、記録を安全に保管するだけでなく、真正コピー(原本と同一のコピー)の作成ルールも定めておく必要があります。

<紙媒体における対応のポイント>
◆記録用紙の原本は、不正や過失による書き換えをされないように保存する
◆真正コピーの発行手順を規定化しておく
◆真正コピーを作る際、スキャンされた画像が改ざんされないような仕組みを整える

<電子媒体における対応のポイント>
◆メタデータを含むすべてのデータを、改ざんされないような形式で保存する
◆データに変更・修正があった場合、変更された日時や方法などの変更履歴を印刷できるようにする

(5)A(正確性:Accurate)

正確性とは、記録が真実に基づいており、信頼できることを意味します。正確性は、データインテグリティの大前提であり、虚偽や改ざんなどの不正行為を防ぐための要件です。正確性を満たすためには、作業を手順書に準拠した形で行ったり、コンピュータシステムのバリデーションや定期点検を行ったりという対策が求められます。

<紙媒体における対応のポイント>
◆重要工程の製造記録は、責任者が作業時に立ち会って内容を確認する
◆製造記録は、QA部門内で権限のある担当者が照査・承認を行う

<電子媒体における対応のポイント>
◆データインテグリティ確保の観点から、システムのバリデーションを行う
◆定期的にシステムを見直し、リスクの評価を行う
◆リスクアセスメントに基づいて、レビューの頻度や役割を決める

(6)C(完全性:Complete)

完全性とは、必要な情報がすべて欠損なく、完全にそろっていることを意味します。完全性は、情報のクリティカリティに応じて必要な情報をすべてそろえておくことで、事象の再現を可能にするための要件です。完全性を満たすには、メタデータも含めて記録したり、重要なデータをアーカイブしたりという取り組みが求められます。

<紙媒体における対応のポイント>
◆記録用紙のフォーマットでは、記入すべき情報の内容を明示する
◆記録用紙の誤用を防げるよう、手順を規定しておく

<電子媒体における対応のポイント>
◆アーカイブの際には、監査証跡や電子署名を含むメタデータも保存する
◆データ・メタデータの完全性を確保するため、システムのチェック機能もバリデートする

(7)C(一貫性:Consistent)

一貫性とは、一連の記録に矛盾がないことを意味します。記録がどこかの過程で欠損したり、改ざんされたりするのを防ぐための要件です。データは製造工程だけでなく、製薬におけるライフサイクルを通じて一貫性を保つ必要があります。一貫性を満たすためには、必要なデータを時系列で保存し、定期的に照査することが重要です。

<紙媒体における対応のポイント>
◆記録用紙の原本は、最新版の配布や旧版の廃棄に関して手順を決めておく
◆重要工程の製造記録は、QA部門に送る前に権限のある人が照査を行う

<電子媒体における対応のポイント>
◆不正なアクセスや改ざんを防げるように、データを保管する
◆権限のある人のみがシステムへ入力できるようにし、個人認証を厳格に行う

(8)E(耐用性:Enduring)

耐用性とは、記録が必要な期間、閲覧できる形で保存されていることを意味します。耐用性は重要なデータが消えてしまい、データの整合性を喪失しないように防ぐための要件だと言えるでしょう。耐用性を満たすためには、災害や過失などで文書が紛失しないよう保存したり、データのバックアップをしたりという施策が求められます。

<紙媒体における対応のポイント>
◆記録は火災や湿気、虫害などを防げるような場所で保管する
◆GMPに関する記録をどのくらいの期間保存しておくか、手順書に明記しておく
◆消えないインクで記録し、保存期間中ににじまないよう保管する

<電子媒体における対応のポイント>
◆データはメタデータを含めて、定期的にバックアップ・アーカイブする
◆データをバックアップする際、データの逸失や改ざんを防げるようにする
◆災害に備えて、バックアップコピーを製造所から物理的に離れた場所で保存する

(9)A(可用性:Available when needed)

可用性とは、記録に対して必要なタイミングでアクセスでき、情報を閲覧できることを意味します。可用性は査察や監査のタイミングで、要求された内容を開示できるようにするための要件と言えるでしょう。可用性を満たすには、文書を閲覧しやすい形で保管したり、システムに監査証跡の機能をつけたりという対策が求められます。

<紙媒体における対応のポイント>
◆記録の取り出し方法について手順化しておく
◆記録台帳をはじめ、読み出しやすいような方法で記録を保管する

<電子媒体における対応のポイント>
◆監査証跡はさまざまな項目で検索でき、レビューできるようにする
◆監査証跡の機能について、コンピュータバリデーションで検証を行う

「ALCOA原則」への対応には、最適なシステムの活用を

データインテグリティを確保するには、「ALCOA」「ALCOA+」の原則を正しく理解したうえで対応することが大切です。ただ、医薬品製造における既存システムは、以下のようなさまざまな課題も抱えています。

・レポート出力時の項目に不足がある(「判読性」に問題あり)
・データが永続的媒体に保存されない(「耐用性」に問題あり)
・データ移行が人間によって多数行われる(「正確性」に問題あり)

「ALCOA+」の要件を満たすためには、こうした現状を解消することが不可欠です。そこで当社では、データインテグリティ対応に必要な情報を一元管理できる情報統合システム「FIDIUS」を提供しています。各生産設備のPLCと接続することで、生産品種や重要工程パラメーターなどすべてのデータを一元管理することが可能です。加えて、高度なセキュリティも実現。また、part11ほか各種ガイダンスに準拠する形で、監査証跡の出力を行えます。データインテグリティ対応をお考えの際には、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。